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ショーチョーノテイコー

 「市場化テスト 省庁の怠慢をどう打ち破る」

 これは4月7日付けの読売新聞社説のタイトルである。内容はと言うと、市場化テスト(公共サービスの官民競争入札制度)の導入が省庁の抵抗もあって進んでいない、と文句をたれている記事である。

 国は悪で、省庁の抵抗は悪の組織の反乱。以前も書いたが、こういうイメージだけで記事を書けるのだから論説委員というのはいい仕事である。「お役所仕事」などと言って公務員を馬鹿にした記事を書けば読者が喜ぶと考えているのだろう。しかしながら、この手の記事で本当に馬鹿にされているのは読者なのだから何とも笑えない。

 民間企業がセーフティネットとしての公の仕事を受託すれば、その内容によっては民間対民間のやり取りになってしまい、どうしても利用者より企業向きの考えになったり、国が指導を行う機会が奪われたりする危険が内在する。

 非効率な事務手続きが非難されるのはいた仕方ないと思うのだが、役所が損得なしに行動するが故に利用者が保護される局面もある。具体的なことを書けないのが辛いところだが、私の関わっている仕事にはそのような面があり、安易な民間解放に、私は慎重な考えを持っている。

 省庁の抵抗と書けば私利私欲の塊のような印象しか持てない方も多いと思うが、実際には最後の砦を守る職員たちの誇りもそこにこめられていることがある。正直に言えば自分達の仕事がなくなることは怖い。誰しも生活を抱えている。だがそれと同じくらい怖いのは、社会を裏から支え続けている辛くとも大事な仕事が、利益至上主義に蹂躙されてしまうことである。

 公平な議論がなされないまま、巨大な新聞社が中身カラッポの社説で批判のための批判を繰り広げ、いつのまにか最低限の守るべきラインが民間企業の餌場に成り下がる。公務員への憎しみが充足されれば皆それで満足なのだろうか。

 ちなみに、この記事で推奨されているハローワークの民営化であるが、市場化テストモデル事業の実績評価で国は民間を上回る実績をあげている。厚生労働省のHPを見ればアッサリわかることなのだが論説委員は部屋から出ないだけに飽きたらずパソコンもまともに使えないのだろう。

 労働者を右から左に動かす人材ビジネスが生んできた歴史的な悲劇、そして人間の使い捨てで台頭してきた現代の派遣業界、現場で消耗品のように使われる若年者たち。雇用促進のための機関が利益第一の人材ビジネス業界に食われることの危険を、大新聞たる読売は理解していないわけだ。

 さて、上記の主張はいわゆる「ショーチョーノテイコー」の一例であるが、これは検討するに値しないことだろうか。国、役人が言うから切って捨ててよいのだろうか。悲しき思考停止のツケは新聞社ではなく国民が払うことになる。

 それで本当にいいのですか?

金太郎飴

 4月に入り暫定税率の期限切れ報道が流れたが、どのテレビ局も全く同じパターンで新年度早々呆れさせてもらった。ご存知のとおり、ガソリンスタンドの取材→店員の市場調査に同乗→赤字覚悟の値下げ→驚く客→石油元売を取材→続々と出発するタンクローリー、といった報道ばかりで、カルテルでも結んでいるんじゃないかと疑いたくなる内容だった。

(一応、NHKはかろうじて地方の道路工事やトンネル工事がストップしてしまった様子や明日の生活に不安を滲ませる工事現場作業員の声を報道していて、わずかに救いがあった)

 某サイトで指摘されていたが、マスコミは暫定税率の問題で国民に冷静な判断材料を全く提供しなかった。何兆円もの道路特定財源の在り方を検討するにあたり、やれ職員旅行だのミュージカルだの驚くほど次元の低い叩き報道にいそしみ、いざガソリンの値段が下がると「政府に混乱の責任が」と騒ぎ出す。節操のなさもここまでくると見事である。

 たしかにガソリンが安くなるのはありがたい。しかし道路特定財源に頼っている地方自治体からすれば地方の生活者や経済に与える悪影響は甚大である。この辺の事情を全く無視した報道ぶりを見ると、普段「地方切捨てはケシカラン」などと言っているのが全くのウソであることがよくわかる。

 ちなみに、私が住んでいるような田舎のテレビ局では先月、暫定税率維持を訴える地元自治体トップや経済団体の集まりなどが淡々と報道されていたが、この辺、地元スポンサー企業への配慮でいつもの役所叩きができず、結果「冷静な報道」になっているのが何とも皮肉な感じであった。

 中身のない報道をしても叩かれないし、潰れない。メディアに自浄作用がないのもうなずける話である。

犯人がつかまっても犯人探し

 JR荒川沖駅で起きた八人の無差別連続殺傷事件でさっそく警察叩きが始まっている。大失態には違いないが、結果論を並べ立てて不信を煽るってのもどうなんだろうねぇ。反省してほしいというより潰しにかかっているように見える。

 この件、現場の捜査員たちも相当悔しい思いをしているだろう。一生十字架を背負って生きていかなければいけない。いろんな意味でやりきれない事件である。

ひさびさにぼやき

 広告がうっとおしいのでエントリ投下。

 少し前の話だが、大阪の橋下府知事が若手職員を集めた朝礼で女性職員から反論されたという件。図らずも「サービス残業」というキーワードが飛び出していた(ちなみに現在は賃金不払残業と呼ばれているらしい)。
 この件に関する批判の中身を見ると、予想通り職員に対して

 「民間なら当たり前」
 「仕事が遅いからだ」
 「公務員なら我慢しろ」

 と冷静さを欠く内容が少なくない。公務員を憎むあまり、合法化されれば自分達が最も苦しむことになる不払残業を容認してしまう。誰かが50時間、不払残業をさせられたと言えば、「俺は100時間だ」と言って話を遮るのもこの手の批判をする人々である。

 暗愚の極みと言える。「俺はもっとしている」「私はもっとしている」と不幸自慢を続けていけば、最後に残るのは過労死したうえに残業代ももらえなかったような救えない人達だけである。死ななければ意見もいえない。

 おりしもワークライフバランスが話題となり、残業抑制のために割増賃金の割増率アップも議論される世の中で、知事という公職にある者が違法である賃金不払残業を容認するような発言をする(それも弁護士である者が)。経済団体の幹部が同じ発言をすればたちまち非難の嵐にさらされるところ、公務員が相手だと「当然だ」と言わんばかりの空気。

 職業を理由とした差別も甚だしい。憎しみ、妬みという感情が人の心を黒く染めてしまうことを痛感する。知事の発言を支持する方々は、自分達の言葉がいわゆるブラック企業の経営者が口にする内容と同じになっていることに気づかないのだろうか。仕事の効率と不払残業の問題をごっちゃにしてはいけない。冷静になってほしい。

 最後に「現場と意見交換をしたい」と希望する橋下知事の、朝礼での発言を引用する。

 『今まで府庁の職員に対して申し訳ないけど敬意を表したこと「いつもよくやってるな」と思ったことは一度もありませんでした』

 赴任してわずかで現場をロクに知らない人間からこんなことを言われて、職員はやる気になるのだろうか。敵意を持った相手と意見交換したいと思う人がどれだけいるのだろうか。

 マスコミを使って自分の部下達の名誉を貶め、恫喝するようなやり方では公務員組織の再生は決してない。

冬眠開始

 際限のないマスコミからの攻撃にうんざりしてしまったせいか、最近は記事を書かず、放置状態になってしまった。訪れてくれた方々には申し訳なく思っています。

 去年もそうであったように今年も冬から春にかけて冬眠期間に突入する。突発的にエントリを投下するかもしれないが、最近は書く気力が湧かないので今後についてはなんとも言えない状況だ。とりあえず言いたいことをダラダラと書き残すことにする。

 消費税の議論が湧き上がる中、公務員は職種を問わず、誰であっても、日頃職務にどれだけ精を出しても、猛烈な批判に晒されることになるだろう。針小棒大、木を見て森を見ない愚かな報道によって、今後も多くの公務労働者が傷つけられることだろう。

 公務とは生活の最低限のところを支えるものである。そこを無思慮に攻撃するのは生活の最後の砦を自分達の手で壊すことに他ならない。「批判」は砦を強固にするかもしれない。公務員の世界だって他の業界同様、問題を抱えている。批判自体が不当なものではない。しかし見境のない「叩き」は一番大切なものを破壊しかねない愚かな行為である。

 公務員全員の年収を100万円くらいにして、役所の人数を半分にすれば、皆さんの生活は向上しますか?今日の平和な日本を明日からも変わらず享受できると思いますか?誇りも尊厳も奪っておいて優秀な人材を、と言うのはおかしいと思いませんか?

 「コームイン」という過度に優遇された特別な生き物など、この世には存在しない。

 働いているのは人間であり、この破壊的な風潮のなか呑気に仕事などできるわけがない。現場を見に来いとは言わない。ただ考えてみてほしい。マスコミの話が本当なら日本のセーフティネットなど完全崩壊しているはずである。現場を支える人たちの地道な努力を、これ以上踏みにじらないでほしい。

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Hamras

Author:Hamras
職業 国家公務員(ノンキャリア)

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